松阪牛のおこり
世界にその名を誇るブランド「松阪牛(まつさかうし)」。
歴史を古くさかのぼると、生産者や関係者たちの努力の結晶が見えてきます。
長い歳月をかけてゆっくり、じっくり築きあげられたブランド。
その原石が輝く宝石になるまでの道のりをたずねることで、より一層「松阪牛」の素晴らしさを知っていただきたいのです。
松阪地方は伊勢平野の中央に位置する農耕の盛んな地域で、農業が機械化される以前に、農機具等を引くなど力仕事を任されていたのが牛なのです。そしてその多くが、古くから役牛として優れた素質をもっていた、兵庫県の但馬地方で生まれた若い雌牛でした。但馬地方は兵庫県の北部、昔の但馬の国。現在の3市1郡(豊岡市、美方郡、養父市、朝来市)を指します。日本海に注ぐ円山川の本流沿い、豊岡市周辺には緑色の農地が広がりますが、平地は岸田川、矢田川、竹野川など河口付近だけであとは山。しかし昼間と朝夕の気温差が大きいことから夜露でやわらかい草が多く、この山と豊富な草、きれいな水という風土の恵みで資質の優れた但馬牛ができるのです。
江戸時代、この雌の子牛は大阪を通って紀州に入り、紀ノ川沿いの農村に連れて来られ、農耕用に調教されました。そしてよく働く役牛に成長した後に松阪地方へと入って来たのです。この牛は松阪近辺では「新牛(あらうし)」と呼ばれ、おとなしくて働き者であったので農家で大切に飼われ、家族同様に暮らしていました。明治になり、来日した外国人による牛肉の需要が始まり、国民にも普及すると、それまで農耕用だった牛が肉用に振り向けられるようになりました。農耕に3~4年使われた牛を「野上がり牛」として1年間肥育、「太牛(ふとうし)」として供給したのです。
松阪牛の定義
黒毛和種、未経産の雌牛
松阪牛個体識別管理システムに登録されていること
松阪牛生産区域(旧22市町村)での肥育期間が最長・最終であること
※生後12ヶ月齢までに松阪牛生産区域に導入され、導入後の移動は生産区域内に限る。
以上の条件をすべて満たし出荷されたものが松阪牛と定められています。
※松阪牛生産区域への導入する生後12ヶ月齢まで子牛の条件につきましては、平成28年4月1日以降に導入された牛が対象となります。
なお『松阪牛』の読み方は「まつさかうし」「まつさかぎゅう」のどちらも正しい読み方です。ただし、「まつさ゛かうし」「まつさ゛かぎゅう」「松坂牛」の表記は誤りです
松阪牛生産地域
松阪市を中心とした2004年(平成16年)11月1日現在の旧22市町村に、旧松阪肉牛生産者の会会員を含みます。市町村合併により、松阪牛生産地域に含まれない町村と合併した所もあるため、混乱を避ける意味でこのように表示しています。
【旧22市町村】
松阪市、津市、伊勢市、久居市、多気町、明和町、飯南町、飯高町、一志町、嬉野町、白山町、香良洲町、三雲町、大台町、大宮町、度会町、小俣町、玉城町、宮川村、勢和村、美杉村、御園村
なお現在の市町ですと、松阪市・明和町・多気町・玉城町・度会町・大台町の全域と津市・伊勢市・大紀町の一部地域に相当します。
特産松阪牛のあらまし
松阪地方では古くから、但馬地方(兵庫県)生まれで紀州育ちの若い雌牛を役牛として導入していました。明治以降はそうした役牛を長期肥育することで肉質の優れた松阪牛として生産してきました。
この肥育技術を継承し、より一層の肥育技術の向上を図るため、松阪牛の中でも特に但馬地方をはじめとする兵庫県より生後約8ヶ月の選び抜いた子牛を導入し、900日以上の長期に渡り農家の手で1頭1頭手塩にかけて肥育されたものを『特産松阪牛』と呼んでいます。(月齢でいうと約38ヶ月以上)一般的に牛を長く肥育することは、通常よりコストとリスクを負うため、特産松阪牛は熟練の農家が秘伝の匠の技を駆使して、1頭1頭を大切に育て上げます。まさに牛を『生きたまま熟成』させるという意味では『究極のエイジングビーフ』ともいえます。このような肥育をされている牛は、日本中はおろか、世界的に見ても他に例を見ません。
そのため特産松阪牛の生産頭数は少なく、松阪牛全体の数パーセントしか存在しません。【平成27年度実績:松阪牛全体の約4%】
この稀少性の高い『特産松阪牛』こそがまさに『松阪牛の中の松阪牛』 『松阪牛のスペシャルグレード』なのです。
松阪牛の特徴
肉眼で見えないほどのきめの細かいサシ(霜降り)
見た目とは逆に、まろやかでくどくない脂の旨み
常温で溶け出すほど脂肪融点がひときわ低く、とろけるような口どけ
おはしで軽く切れてしまうほどの柔らかな肉質
甘く深みのある上品な香り
赤みの部分は、色味が濃く、凝縮された肉のうまみがぎっしり!